東京高等裁判所 昭和34年(く)7号 決定 1959年2月24日
少年 D(昭和一六・九・二三生)
主文
本件抗告を棄却する。
理由
本件抗告の理由は、少年D提出の抗告申立書に記載されたとおりであるから、ここにこれを引用し、次のように判断する。
本件少年保護事件並びに少年調査各記録を調査するに、原審のなした保護処分決定は相当であつて、原決定には、決定に影響を及ぼすべき法令の違反、重大な事事の誤認又は処分の著しい不当ありと認むべき事由を見出し得ない。すなわち本件強姦未遂の事実は記録中の被害者E子、共犯者F、同Gの司法警察員に対する各供述調書の記載により証明十分であり、前記各記録に現われた少年の非行歴、性行、交友関係、家庭環境を検討するに、少年は、昭和三十一年はじめから同三十二年にかけて、単独又は共犯者と共に、二十数回に亘り窃盗を行い、同年七月二日静岡地方裁判所沼津支部において保護観察処分に付せられたに拘らず、その後間もなく同年十月十八日窃盗を累ね、東京家庭裁判所において試験観察の上不処分となる等少年の非行性は相当程度に顕著であるのみならず、少年の性行は、衝動性強く軽卒で雷同的行動をとり易く、その不良な交友関係と相まつて、本件を含め一連の非行の背景を形成しており、しかもその家庭環境は、実父は船大工として諸方を転々し家庭に帰るのは月一、二回に過ぎず、実母は少年の指導監督につき放任的で無責任であると認められるので、この際少年を不良交友から隔離し、その異常性格を矯正するため相当施設に収容することが適切妥当な措置であると考える。その意味において原審が少年を中等少年院に送致する旨決定したのは相当である。所論は本件強姦事件の共犯者間における地位役割を考慮すれば、少年に対する措置は不公平であると主張するが保護処分の目的に照し、当該非行又は犯罪における地位役割のみを理由として処分の不公平を訴うべき筋合ではないのみならず、本件を発議したのはH某であるが、行動面で主導的役割を演じたのは少年であるし、その他諸般の事情に照し、本件措置が著しく不公平であるとはいい難い。
以上の理由により本件抗告は理由がないから、これを棄却することとし、少年法第三十三条第一項により主文のとおり決定する。
(裁判長判事 谷中薫 判事 坂間孝司 判事 司波実)